
気が付けば3ヶ月も投稿を飛ばしてしまっていました。
なので、今回は少し真面目なコラムのようなものを書いてみました。
お時間ある時に読んでみてください。
現在施工中の古民家はなんというかとても「気」が良い。
家の建ち方も古い割には悪く無く水平が少し狂いつつも垂直は維持されている。恐らく盛り土部分が少なくほぼ切土の上に建てられた伝統工法の家だからだろう。築年数は不明だが、主体部分は50年程度な気がする。何度も改装されているのか昭和の名残の所謂「悪い建材」による欠損や欠陥がいたるところにみられるがベースの構造体などは地場の山から取られた木材で組まれているのが和室周り(とはいってもほとんど和室)をみているとよくわかる。
ブリキ屋根で覆われている茅葺屋根の効果もあるのかも知れないが、その土地の木と土で作られた家は独特な「良い雰囲気」を持っている。ただそこに居るだけで気持ちがいい。
今回は物件のオリジナル部分には着手せず昭和中期から後期に行われたであろうハリボテリフォーム部分の改修がメイン。床の骨組みに直接貼られたベニヤフローリングは当時の糊の耐久性を象徴するかの如くクロワッサン状になってしまっている。踏み抜いて怪我をする前に無垢の杉フローリングを貼りたいというのが施主様のご要望。それではせっかくなので近くの建材店(杉とヒノキの製材所があった)で地場の床板を仕入れてはどうかとアポなしで訪問し、事情を話させてもらったのだが、「うちでは無理」との返答。
その理由は「兵庫県内の山は暗すぎるから」 なんのことかと思うが、和歌山や奈良・四国に比べて兵庫の山は木の植え方が密過ぎるそうで、植樹50年ほど経った今は県内どこの山も切り時で木は文字通り山ほどあるのだが密に植えすぎたおかげで、切り出し難いとか縦にばかり伸びてしまって高すぎるとか手入れがし難かったのか枝払いができていないばかりに死に節(板に製材したときに抜けてしまう節)だらけになるので仕上げ建材に向かないなど、いろいろな意味で「暗い山」だそうだ。
この「死に節」にカミキリムシが穴を空けてそこから雨水が入り黒いシミになるのも木材の評価を落とす。このカミキリムシは在来種だが、温暖化により生息エリアが拡大しているそうだ。これら複数の問題が絡み合い兵庫県の杉材は主に足場板や土木用、一番多いのはバイオマス燃料、はたまたパーム油の廃殻をバイオマス燃料にした時の高温化を抑える為に生木投入して鎮静燃料に使われるのだとか。
地場材で内装ができたらイイ!と意気揚々と乗り込んだもののまさかの回答でとても残念な気持ちになったが、50年前というと住宅バブルで山が丸裸になって土砂崩れや鉄砲水といった環境問題が出始めたころかな~などと思いふけってみたり、山木がバンバン売れるもんだから次は倍量植えて子孫はウハウハやな~って考えたのかな~なんて想像しながらしぶしぶ現場にもどった。
だいたい築50年くらいのこの物件「儲け根性」ではなく植林のあるべき姿を貫いて育てられた材木を使って建てられた古民家。きっとそんなストーリーもあって「気持ちいい」家なんだろうなと思う。